特別受益は、結婚の支度金にあてる等の名目で、特定の相続人が被相続人から遺贈や生前贈与の形で譲り受けた財産(経済的利益)のことです。
被相続人から特別受益にあたる財産を譲り受けた相続人(特定受益者)がいる場合、その額を相続開始時の遺産全体の評価額に加算し、その合計額から、各相続人が実際に取得する遺産の額を決めます。この金額が特別受益にあたる財産の額を超えない場合、特別受益者には新たな財産を求める権利はありません。
例えば、被相続人の相続人に対する遺贈や生前贈与は、原則として「特別受益」に該当します。
但し、①遊興費など生計の資本として贈与したとはいえない場合、②扶養の一部と認められる場合、③相続人全員が同程度の贈与を受けている場合などは「特別受益」に該当しないと考えられています。
例えば、通常、お祝い金、結納金、挙式費用は「特別受益」には該当せず、学資の支出についても特別に多額なものでない限り「特別受益」には該当しないとされています。
なお、生命保険は、贈与された財産ではありませんので原則として「特別受益」には該当しませんが、保険金受取人である相続人と他の共同相続人との不公平があまりにも大きいと考えられる場合には、例外的に「特別受益」と同様に取り扱われる場合があります(これは、最高裁平成16年10月29日が同様に判断しています。)。
特別受益は、贈与時や遺産分割時ではなく、相続開始時を基準に評価されます。
民法903条3項は、被相続人は、意思表示によって、生前贈与や遺贈について、特別受益としての持ち戻しの対象としないことができる旨を定めています。したがって、特別受益があったとしても、被相続人が遺言などによってこれを特別受益の持ち戻しの対象としない旨の意思表示があった場合には、特別受益の持ち戻しを行う必要はありません。